高村光太郎「最低にして最高の道」朗読カフェ 宮下桐歌朗読 名作文学の朗読

最低にして最高の道    

                 高村光太郎 

  もうよさう。
  ちひさな利慾とちひさな不平と、
  ちひさなぐちとちひさな怒りと、
  さういふうるさいけちなものは、
  あゝ、きれいにもうよさう。
  わたくしごとのいざこざに
  みにくい皺(しわ)を縱によせて
  この世を地獄(ぢごく)に住むのはよさう。
  こそこそと裏から裏へ
  うす汚い企みをやるのはよさう。
  この世の拔け驅けはもうよさう。
  さういふことはともかく忘れて、
  みんなといつしよに大きく生きよう。
  見かけもかけ値もない裸(はだか)のこゝろで
  らくらくと、のびのびと、
  あの空を仰いでわれらは生きよう。
  泣くも笑ふもみんなといつしよに、
  最低にして最高の道を行かう。

2021年7月9日

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