山本周五郎「鼓くらべ」朗読カフェ 喜多川拓郎朗読

山本周五郎「鼓くらべ」朗読カフェ 喜多川拓郎朗読

鼓くらべ

庭先に暖かい小春日の光があふれていた。おおかたは枯れた籬の菊の中に、もう小さくしか咲けなくなった花が一輪だけ、茶色に縮れたた枯れ葉の間から、あざやかに白い花びらをつつましくのぞかせていた。

お留伊は小鼓を打っていた。加賀国森本で一番の絹問屋の娘で、年は十五になる。目鼻だちは優れてれて美しいが、その美しさはすみ通ったギヤマンの壺のように冷たく、勝ち気な、おごった心をそのままえがいたように見える。ひとみは激しい光を帯び、朱いくちびるを引き结んでけんめいに小鼓を打っている姿は、美しいというよりはすさまじいものを感じさせる。

2020年8月8日

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です