2017年9月

  • 芥川龍之介「おしの」海渡みなみ朗読

    19.13 Jun 03, 2017

    ここは南蛮寺なんばんじの堂内である。ふだんならばまだ硝子画ガラスえの窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇つゆぐもりだけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木のはだを光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。それからずっと堂の奥に常燈明じょうとうみょう油火あぶらびが一つ、がんの中にたたずんだ聖者の像を照らしている。参詣人はもう一人もいない。
    そう云う薄暗い堂内に紅毛人こうもうじん神父しんぷが一人、祈祷きとうの頭をれている。年は四十五六であろう。額のせまい、顴骨かんこつの突き出た、頬鬚ほおひげの深い男である。ゆかの上に引きずった着物は「あびと」ととなえる僧衣らしい。そう云えば「こんたつ」ととなえる念珠ねんじゅ手頸てくび一巻ひとまき巻いたのち、かすかに青珠あおたまを垂らしている。
    堂内は勿論ひっそりしている。神父はいつまでも身動きをしない。
    そこへ日本人の女が一人、静かに堂内へはいって来た。もんを染めた古帷子ふるかたびらに何か黒い帯をしめた、武家ぶけの女房らしい女である。これはまだ三十代であろう。が、ちょいと見たところは年よりはずっとふけて見える。第一妙に顔色が悪い。目のまわりも黒いかさをとっている。しかし大体だいたいの目鼻だちは美しいと言っても差支えない。いや、端正に過ぎる結果、むしろけんのあるくらいである。
    女はさも珍らしそうに聖水盤せいすいばんや祈祷机を見ながら、ず堂の奥へ歩み寄った。すると薄暗い聖壇の前に神父が一人ひざまずいている。女はやや驚いたように、ぴたりとそこへ足を止めた。が、相手の祈祷していることはただちにそれと察せられたらしい。女は神父を眺めたまま、黙然もくねんとそこにたたずんでいる

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