新美南吉「一年生たちとひよめ」

新美南吉「一年生たちとひよめ」飯田桃子朗読

3.70
Dec 12, 2017

一年生たちとひよめ

新美南吉

学校へいくとちゅうに、大きないけがありました。
一年生たちが、朝そこを通りかかりました。
池の中にはひよめが五六っぱ、黒くうかんでおりました。
それをみると一年生たちは、いつものように声をそろえて、ひイよめ、
ひよめ、
だんごやアるに
くウぐウれッ、

とうたいました。
するとひよめは頭からぷくりと水のなかにもぐりました。だんごがもらえるのをよろこんでいるようにみえました。
けれど一年生たちは、ひよめにだんごをやりませんでした。学校へゆくのにだんごなどもっている子はありません。
一年生たちは、それから学校にきました。
学校では先生が教えました。
「みなさん、うそをついてはなりません。うそをつくのはたいへんわるいことです。むかしの人は、うそをつくと死んでから赤鬼あかおにに、したべろをくぎぬきでひっこぬかれるといったものです。うそをついてはなりません。さあ、わかった人は手をあげて。」
みんなが手をあげました。みんなよくわかったからであります。
さて学校がおわると、一年生たちはまた池のふちを通りかかったのでありました。
ひよめはやはりおりました。一年生たちのかえりを待っていたかのように、水の上からこちらをみていました。

ひイよめ、
ひよめ、

と一年生たちは、いつものくせでうたいはじめました。
しかし、そのあとをつづけてうたうものはありませんでした。「だんごやるに、くぐれ」とうたったら、それはうそをいったことになります。うそをいってはならない、と今日きょう学校でおそわったばかりではありませんか。
さて、どうしたものでしょう。
このままいってしまうのもざんねんです。そしたらひよめのほうでも、さみしいと思うにちがいありません

2017年12月29日

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