森川らら

  • 倉沢はすみ作「モシカアンニャ」朗読 森川らら

    81.75 Jul 31, 2017

    ■あらすじ
    昭和 30 年代。
    小学 4 年生の昭夫は、三人兄弟の次男坊。中学生の兄と幼い弟に挟まれ、ちょっぴり
    影が薄いことを自覚している。父は村に一軒の餅屋で忙しく、体の弱い母に甘える機会も
    少ない。だが、母が一度だけ、兄弟たちに内緒で昭夫にだけカステラの味見をさせてくれ
    たことがあった。以来、昭夫のなかでは、カステラこそが最もおいしい、特別な菓子に
    なっていた。
    ある日、昭夫は習字教室を開いている寺の「お楽しみ会」に招かれる。弟と共に出掛け
    た昭夫は、後片付けの途中で住職から「この寺が好きか」と聞かれる。寺の境内は格好の
    遊び場であり、習字も教えてもらっている以上、嫌いなはずがない。だが「では寺の子に
    なるか」と予想外の言葉を掛けられ、戸惑ってしまう。
    昭夫の住む地域では、次男は「モシカアンニャ」と呼ばれていた。
    アンニャ(長男)ではない、「もしかしたら」アンニャになるかもしれない次男坊。
    そんな昭夫に、実子のない住職は養子の話を持ちかけて来たのだった。昭夫は驚いて
    逃げ帰るが、数日後、住職が来訪する。両親不在のなか、昭夫は住職が自分をもらいに
    来たのだと緊張するが、兄が帰宅して昭夫を助ける。
    それからまた数日後、昭夫は寺へ使いに出される。住職は昭夫をねぎらい、ほうびに
    カステラを供する。大振りに切られたカステラに興奮する昭夫。遠慮なく取って食べ、
    すすめられるままに二つ目に手を伸ばした昭夫に、住職が再び養子の話を持ちかける。
    寺の子にはなりたくないとうつむく昭夫に、住職は寂しそうに笑いながら、生き別れに
    なった甥がいることを語る。昭夫は「その甥もどこかで親切な人に出会い、自分と同じ
    ように美味しいお菓子をもらっているに違いない」と言い、出されたカステラを完食する。
    後日、本家の伯父が間に入って正式に養子縁組の話を持って来るが、母親がきっぱりと
    断る。それを聞いて、昭夫は涙ぐむほど安堵するのだった。

    倉沢はすみ